※本記事は物語の重大なネタバレを含みます。未読・未視聴の方はご注意ください。
今回取り上げるのは、アニメ/マンガ『薬屋のひとりごと』の「子翠」と「楼蘭妃」です。
物語の中盤、猫猫(マオマオ)の友人として登場し、読者や視聴者にも癒やしを与えてくれた侍女・子翠(しすい)。
一方で、常に厚化粧で顔を変え、ナゾの不気味さを漂わせていた上級妃の一人・楼蘭妃(ロウランひ)。
この二人が同一人物であると判明した瞬間、物語のパズルは一気に組み上がり、壮大な「子一族の反乱」へと突入します。
なぜ彼女は二つの顔を持たなければならなかったのか。その背景にある、あまりにも切ない真実を紐解いていきましょう!
結論・子翠と楼蘭妃は同一人物
結論から述べると、子翠と楼蘭妃は同一人物です。
私もはじめアニメ勢でしたが、この展開には言葉を失いました。
あの「虫が大好きでキャッキャしていた子翠」と、
「子翠」
あの「冷徹で捉えどころのない楼蘭妃」が同じ人物とは。(下動画の最後に出てくるのが楼蘭妃)
最後が「楼蘭妃」
初見では到底信じられませんでした。(今思うと伏線はたくさんあったけど)
後宮内で上級妃の一人「楼蘭妃」として君臨しながらも、彼女は巧みな化粧(というより変装に近い技術)を使い、下級侍女「子翠」として猫猫に近づいていました。
彼女がこれほどまでのリスクを冒して二重生活を送っていた理由には、大きく分けて以下の2つの思惑が大きく関係しています。
まずは、ざっとまとめますね。
- 子一族としての戦略的な側面:上級妃として後宮内に入内した目的は、父・子昌(シショウ)の「政治・戦略的な思惑」と母・神美(シェンメイ)の「個人的・感情的な思惑」が複雑に重なり合った結果です。
- 後宮内の情報を収集し、父・子昌の反乱を内側から手引きするため
- 母・神美の、自分を蔑ろにされてきた皇族に対する究極の復讐のため
- 楼蘭自身の個人的な側面(隠した本望):一族の駒・両親の完璧な人形としてではなく、一人の娘として「歪んだ子一族の歴史を自分の代ですべて終わらせる」という心中にも似た覚悟。
また詳しく説明しますが、これらが「楼蘭妃/子翠」として二重生活を送っていた理由です。
子昌による軍事・政治的な反乱の足がかり(戦略的側面)であり、その根底には神美による皇族への復讐と権力奪取(個人的野望)もあったわけです。
しかし、楼蘭自身は協力しつつもこの両親の思惑に心からは同意していませんでした。
そこが面白いところです。
両親の野望を知りつつ、彼女はあえて「完璧な人形」として振る舞いながらも、裏では自らの意志でそのすべての結末を書き換えようとしていたのでした。
それぞれのキャラクターを確認しながら、詳細をくわしくおっていきましょう。
楼蘭妃(ロウランひ)のプロフィール
楼蘭妃は、阿多妃(アードゥオひ)の後釜として後宮入りした上級妃の一人です。
- 立場:上級妃・四夫人の一人(新たな淑妃)
- 出身:外戚の有力者・子昌と神美の間に生まれた娘
- 特徴:非常に特徴的なのは、「毎日顔が変わる」と言われるほどの厚化粧と南国風の派手な衣装。周囲からは「何を考えているか分からない変わり者」という印象を持たれている。
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『#薬屋のひとりごと』
キャラクター新ビジュアル公開!
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❖ 楼蘭妃 ◇
現帝の妃で上級妃・四夫人の一人「淑妃」。
毎日のように髪型や化粧、衣服の雰囲気が
変わるため、「変わり者」と言われ、
噂の的となっている。 pic.twitter.com/DgL4h0Sd50
彼女は日によって全く異なる厚化粧を施し、その容姿は誰にも元の素顔を悟らせないほどでした。
これは単なる彼女の趣向ではなく、「自分という存在を特定させない」「感情を読み取らせない」「侍女が成り代わってもバレないように」という徹底した隠蔽工作でもありました。
上級妃の立場にいながら、その心は常に冷めており、一族の野望のために送られた「生け贄」のような孤独を抱えていました。
常に無表情で無口を貫いていたのは、「子翠」と同一人物だとバレないようにするための策略でもあったわけですね。
実際に、”楼蘭妃として”猫猫と会話をするシーンは1回もありません。声はさすがにバレる可能性がありますから。
実は、楼蘭妃が入内してきたときに連れられた侍女たちも、みな似たような背丈で顔立ちも似ています。
これは、侍女たちに厚化粧を施すことで、楼蘭妃の身代わりに仕立て、子翠として活動している間も不在を悟られないようにするためでした。
物語の最終局面では、壬氏(ジンシ)に楼蘭妃が偽物であること(侍女が成り代わっていること)がバレてしまいますが。
実は、楼蘭妃は皇帝の寵愛を受ける立場にありながらも、密かに妊娠を避けるために堕胎作用のある植物を日常的に摂取していたという背景があります。
これは、先帝や皇族に対する彼女自身の嫌悪感もあるのかもしれませんが、何よりも「母・神美の野望」を内側から静かに拒絶していたことも示しています。
子翠(しすい)のプロフィール
一方の子翠は、下級の侍女として猫猫の前に現れます。
- 立場:後宮の侍女
- 趣味:無類の虫好き
- 性格:明るく天真爛漫、人懐っこい
子翠は、楼蘭妃の冷徹な印象とは正反対の性格です。猫猫(マオマオ)や小蘭(シャオラン)とも仲良くなっています。
(結末を知ってから改めて見ると、なんとも胸熱なスリーショット)
猫猫とは、珍しい虫を見つけるたびに報告に来たり、一緒に後宮内を探索したりする「友人」のような関係を築きました。猫猫も彼女の前では少し呆れつつも、気を許していた節があります。
しかし、この「子翠」という姿こそが、楼蘭が作り上げた完璧な擬態であり、同時に彼女が「こうありたかった」という願いが投影された姿・もしくは彼女の本質に最も近い姿でもあったのかもしれませんね。
上級妃という立場(楼蘭)と、自由に動ける下女という立場(子翠)を使い分けることで、宮中の動向を把握しようとしました。
趣味である「虫取り」をカモフラージュにして、薬草(堕胎成分のあるものや毒草)を取っていたり、後宮の北側にある子北州につながる「抜け道」の整備や偵察も行っていました。(※実はこの抜け道は、もともと父・子昌が20年以上前に、当時の妃(楼蘭の母・神美)と駆け落ちするために作ったものだった。)
猫の(まおまお)の捕獲をあんなに急いだのは、抜け道が他の人に見つからないようにする意図もあったのですね。
今となって振り返ると、子翠にはその身分には似つかぬ聡明さ・育ちの良さ・高貴な身分であることが滲み出ているシーンが散りばめられています。
子翠と翠苓(すいれい)の関係性
子翠(楼蘭)の物語を語る上で欠かせないのが、もう一人の重要人物、翠苓(すいれい)です。
結論を先に言うと、翠苓と楼蘭は、腹違いの姉妹です。
翠苓は「よみがえりの薬」を使い、後宮を混乱に陥れた薬師の官女でしたよね。
その後、翠苓は男の宦官に化けて再び後宮に間者としてもぐりこんでいます。
実は、この翠苓も子一族の「子」でした。
翠苓の父親は子昌(ししょう)、母親は先帝と大宝(たいほう)の娘です。
つまり、翠苓も楼蘭も父親は同じ子昌であり、翠苓が姉、楼蘭が妹になります。
翠苓と楼蘭は一族の道具として育てられながらも、姉妹としての深い絆を持っていました。
翠苓が薬師としての技術で「死」を偽装する術を楼蘭に教えたことも、後に彼女たちの運命を大きく左右することになります。堕胎剤に関する薬の知識もおそらく翠苓から教えてもらったのでしょう。
ちょっとややこしい話であり、物語の根幹にも大きく関わってくるので章を分けて順番に解説しますね。
子翠と翠苓・奪われた名前と血塗られた一族の経緯
あとでまたご説明しますが、先に家系図をお見せしておきます。

※二次利用可ですが必ず引用付き厳守
順番に説明していきます。
楼蘭と翠苓の、二人の数奇な運命は、先代の皇帝(先帝)の歪んだ性癖から始まりました。(ある意味ここがすべての元凶)
悲劇の始まり・先帝の性癖と「大宝」の娘
先帝(現皇帝の父)は、極度の幼女嗜好を持つ人物でした。いわゆる、ロリコンです。
回想シーンで先帝は14歳を過ぎたら夜伽に通わなくなったというような描写があるので、大体14歳ぐらいが先帝にとってのボーダーラインだったと思われます。
その幼女嗜好のせいで当時、後宮でお手つきになった幼女がたくさんいました(おぞましい…)。その被害者の一人が大宝(たいほう)と呼ばれる侍女でした。
先帝と大宝の間には、子供が生まれてしまいます。
大宝というのは当時、先帝の妃として入内していた神美(シェンメイ)の侍女でした。
当時、神美は妃として後宮にいたわけですが、ここで「なぜ神美(シェンメイ)が妃として後宮入りしていたのか」をさかのぼって回想していきます。
神美(シェンメイ)が後宮に入内した経緯
神美の入内の本当の理由は、子の一族の不祥事に対する「人質」です。
当時、子の一族(神美の実家)は、国の禁忌である「奴隷交易(茘の国民を国外へ売り飛ばすこと)」に手を染めていました。これが当時の女帝(現在の皇太后)に露見し、一族は滅亡の危機に瀕します。
女帝は、一族を根絶やしにしない代わりに、当時の当主の娘(神美)を「人質」として後宮へ差し出すよう命じました。
表向きは「上級妃」としての入内でしたが、その実態は一族が二度と不祥事を起こさないための監視対象・つまり「人質」です。
神美本人の認識
ここもまた重要なポイントですが、神美本人は、この入内が「罰」や「人質」の類であることは知りませんでした。
彼女は子の一族の本家という高い誇りを持っており、「自分が類まれなる美貌と高貴な身分を持っているから、皇帝(先帝)に望まれて入内したのだ」と信じていたのだと思います。
とにかく、一族(神美の父や許嫁だった子昌)は、神美の高いプライドを傷つけないため、あるいは彼女に余計な絶望を与えないために、奴隷交易の件や人質であるという事実を一切伝えなかったわけです。
これがまた後の悲劇を生みます。
神美の入内後の悲劇と狂気への転落
「選ばれた妃」として自信満々に入内した神美を待っていたのは、残酷な現実でした。
言った通り、先帝は極度の幼女嗜好のため、入内した時点ですでに妙齢(おそらく14歳を超えていた)だった神美には全く興味を示しませんでした。
「愛されるはず」「皇帝(先帝)の子を産めば、自分が国母になれる」という強いプライドや一族を背負った野望とは裏腹に、一度も夜伽に呼ばれることなく長年放置されました。
そこにきて、自分が無視されている一方で、格下の侍女である大宝(たいほう)が先帝のお手付きとなり妊娠したことが、彼女のプライドを完全に粉砕し、皇族への深い憎悪と狂気を生む決定的な引き金となりました。周りからもさらに冷ややかな目で見られました。
つまり、この「事実を知らないままプライドをへし折られた」という経験が神美の人格を捻じ曲げ、後に娘の楼蘭や、一族を巻き込んだ巨大な反乱へと繋がっていくわけです。
ずっと神美のことを心にかけていた許嫁の子昌もこの時、彼女に駆け落ちすることを提案しますが、神美は高すぎるプライドからこれに応えることはできませんでした。
この時、もし逃げていたらすべての運命が変わっていたのかもしれません…。
不義の子とされた娘
話が戻ります。
ロリコンである先帝と大宝の間には、秘密裏に娘が生まれましたよね。
先帝のロリコン嗜好はみんな知っていましたが、侍女との子供ですし表立って公にはできないため、後にこの娘は「後宮の医官との間に生まれた不義の子」という濡れ衣を着せられ、その医官と共に娘は後宮を追放されます。
追放された医官と大宝の娘(先帝の子)は、子一族の本拠地である子北州(しほくしゅう)で密かに匿われることとなりました。
子昌(ししょう)の苦渋の選択と交換条件
時が流れ、大宝の娘(先帝の子)は、子北州で妙齢の女性へと育ちます。
先帝はかつて追放した娘のことを密かに心にかけており、子一族の長である子昌に「我が娘を妻として娶ってほしい」と懇願します。
子昌の心には、昔から神美への変わらぬ深い愛がありました。しかし、皇帝の命令をむげにすることもできず、泣く泣く大宝の娘を正妻として迎え入れます。
ただし、子昌はその娘を娶る交換条件として、後宮で冷遇されていた神美を下賜(かし)させることを要求しました。
子昌にとっては愛する神美を後宮という檻から救い出すための策でしたが、
神美自身はこの事実(子昌が自分を望んだこと)を知らぬまま、「寵愛を一切受けないまま捨てられた」という思い込みを深めていきます。
翠苓の誕生と「奪われた名前」
子昌と大宝の娘(先帝の子)の間に生まれたのが、翠苓(すいれい)です。
実は、 翠苓が生まれたとき、彼女に与えられた本来の名前は「子翠(しすい)」でした。
後に神美が下賜されて子北州に帰ってきた際、彼女の心は長年の冷遇と「自分を差し置いて別の女が正妻の座にいる」という憎悪も相まって完全に捻じ曲がっていました。
神美は正妻である大宝の娘と、幼い翠苓(本名:子翠)に対して凄絶な折檻を繰り返します。
翠苓の母(大宝の娘)は、おそらくその折檻が原因で命を落としたとされています。
父である子昌(ししょう)は、国の重職についており子北州にはほとんどいなかったため、その実情(日常的に暴力を振るっていたこと)を知らなかったのでしょう。(やんわりとは知っていたはずだが)
さらに神美は嫌がらせとして、翠苓に対して本名である「子翠」という名を名乗ることを禁じ、その名前を奪ったわけです。
こうして「子翠」という名は封印され、彼女は「翠苓」として一族の影に隠れて生きることを強要されたのです。
楼蘭の想い・なぜ彼女は「子翠」と名乗ったのか
ここで、腹違いの姉妹である楼蘭の話とつながってきます。
その後、子昌と神美の間に生まれたのが楼蘭(子翠)です。
楼蘭は、狂気に走る母とは対照的に、折檻を受けながらも強く生きる姉・翠苓を、実の家族以上に慕い、強く尊敬していました。
両親の野望をその身に受ける「完璧な人形」を演じていた楼蘭にとっては、姉である翠苓が心の支えでもあったのでしょう。
この時楼蘭は、化粧を変え侍女になりすまし、翠苓と交流していたという時期があります。(この時の経験が、のちに子翠として上手く立ち回ることにも活きたのでしょう。)
母・神美というと、実の娘が侍女に化けていることには全く気づかず、「身分の低い者」として蔑み、手をあげることまでありました。それほどまでに神美は、狂気にとらわれており、楼蘭はそんな母に対する拒絶感を深めていったのでしょう。
だからこそ、楼蘭が後宮に潜入する際、あえて偽名として選んだのが、姉の本来の名であった「子翠」だったのでした。
楼蘭が「子翠」として猫猫たちと自由に過ごした時間は、
姉が本来送るはずだった「自由な娘としての時間」を、妹である彼女が代わりに生きた、切ない「名前の奪還」でもあったのかもしれませんね。
この「子翠」という名には、二人の絆を象徴する秘密があったわけです。
ここまで、子翠と翠苓の関係性や、子一族の複雑な経緯を紹介しました。
ここであらためてまとめてみましょう。
なぜ子翠(楼蘭妃)は二重生活を送っていたのか
なぜ彼女は、上級妃として後宮に入内しながら、わざわざ侍女に変装してまで後宮を歩き回る必要があったのでしょうか。
①子一族としての戦略的な思惑
第一の理由は、「父・子昌による計略」です。
子昌にとって、楼蘭妃を後宮へ送り込むことは「反乱を成功させるための実務的な布石」でもありました。
万が一反乱が起きた際、後宮内から門を開けたり逃げ道をつくったり、混乱に乗じて重要人物を確保・暗殺したりするには「内通者・間者」が必要でした。
特に父・子昌が建設に関わった「後宮北側の秘密通路」を管理・確保することは彼女の最大の任務とも言えます。いざという時の脱出路であり、兵を招き入れる入り口にもなるからでしょう。
楼蘭は、上級妃という立場と、自由に動ける下女という立場を使い分けることで、宮中の動向を完全に把握しようとしました。ことを有利に進めるための拠点作りですね。
また、第二の理由として、楼蘭は「母・神美の復讐と野望の道具」でもありました。
神美にとって、娘の入内は「自分を蔑ろにした皇族に対する究極の復讐」です。
娘が皇帝の子を産み、その子が次の皇帝になれば、神美は「皇帝の祖母」として大きな権力を握ることができます。かつて自分を冷遇した後宮を、今度は自分が支配するという歪んだ野望です。
②楼蘭自身の個人的な思惑(本当の目的)
しかしそれ以上に重要なのが彼女の「本心」です。
楼蘭自身は両親のどちらの思惑にも、心からは同意していませんでした。
彼女はあえて「完璧な人形」として振る舞いまっていましたが、密かに堕胎薬を飲んでいたことからも、「母の野望」を密かに拒絶していたことは明らかです。
また一方で、一族の破滅がもはや避けられないことを悟った彼女は、ある意味「無」への収束を願っていました。むしろ、滅んだ方が良いということです。
父の戦略(反乱)には協力しますが、それは一族を勝利させるためというより、「歪んだ一族の歴史を自分の代ですべて終わらせる」という心中にも似た覚悟でした。
そして願わくば「姉の翠苓や、子一族の反乱とは関係のない人や子供達を救いたい」という楼蘭自身の強い願いをも心の中に持っていたのでした。
物語の結末・楼蘭妃が最期に果たした役割
それから、子一族の反乱が最終局面を迎えます。
結局、一族が滅びゆく中、楼蘭妃は逃げる道を選びませんでした。
彼女は一族の罪をすべて背負い、母・神美の歪んだ執着を自らの手で終わらせるため、そして一族の最後を看取るために、自ら凄絶な「幕引き」を演じたのでした。
少し、回想していきます。
子翠(楼蘭妃)は後宮を脱出し、一族の本拠地・子北州へと向かいました。
その際、彼女は猫猫を「連れ去る」という強硬手段に出ました。
これには、壬氏や父である羅漢(らかん)もものすごく焦っていましたよね。
なぜ猫猫を連れ去ったのか
楼蘭妃が猫猫を拉致したのは、単なる嫌がらせや人質確保ではありません。
そこには彼女なりの深い信頼と計算がありました。
姉・翠苓が作った「よみがえりの薬(蘇生薬)」を使い、一族の子供たちを救う計画が楼蘭にはありました。
その際、薬の効き目や蘇生後の処置を任せられるのは、卓越した薬知識を持ち、かつ私情に流されない友人・猫猫しかいなかったのです。
また、楼蘭は「子翠」として猫猫と過ごした時間をとても大切に思っていたのでしょう。
自分の人生がどのような結末を迎えるのか、唯一の「友人」である猫猫に見届けてほしいという、彼女なりの寂しい願いでもあったのかもしれませんね。
両親の最期・愛憎の果ての幕引き
その後、子一族は実際に反乱を起こしていきます。
猫猫の父親である羅漢(らかん)や養子・羅半(らはん)らの尽力もあり、
壬氏は、本当の身分が「宦官」ではなく「皇弟(こうてい)」であることを明るみにする決心をして、皇帝直属の禁軍をも動かしました。
そのおかげで反乱が鎮圧されるなかで、楼蘭の父・子昌と母・神美も最期を迎えます。
父・子昌は、自分の野望が一族を滅ぼしたことを悟りながら、最後まで狂った妻(神美)を愛し、守ろうとしたのでした。
子の一族の反乱は、軍事的な戦略という側面ももちろん少なからずはあったと思いますが、むしろ精神的な主導権は妻・神美の「怨恨」にあったわけです。
実行者としての役割を全うし続けた子昌には、「妻への愛と罪悪感」があったのかもしれません。
彼は陥落する砦の中で、「一族の長」としての責任を取り、命を絶ちました。
本当の黒幕であった狂った妻・神美の意を汲み、最後の最期まで「悪役」であることを演じ続けたともいえます。
一方の母・神美は、最後の最期の瞬間に娘の楼蘭から、すべての真実を明かされます。
自分が後宮入りした本当の理由は、子一族の「人質」であったこと。
翠苓が先帝の血を継いでいること。
子昌が正妻として大宝の娘を娶ったのは、先帝の頼みであったこと。
その交換条件として自分が下賜されたこと。
これらの真実を知った神美は、
それでも最後まで先帝に対する憎しみや子昌や取り巻く境遇に対する怨恨に囚われ、狂乱していました。
真実を受け入れることは、やはりできなかったのです。
楼蘭は、母がこれ以上醜態を晒し、他者の手で辱められるのを防ぐため、自らの手で母を殺害(銃の細工による自死)させました。
それは、母の呪縛を断ち切るための楼蘭なりの「慈悲」だったのかもしれません。
楼蘭妃が遺した「希望」
楼蘭妃は自分自身と共に滅びの道を選びます。
しかし、罪のない者たち、未来のある者たちのことは周到に救い出そうとして画策していたのでした。
楼蘭は、「父であり長である・子昌」と、「母であり狂気の源泉である・神美」・そして「自分・楼蘭妃」が死ぬことで、幕引きをはかろうとしていました。
姉である翠苓は「子一族の罪」から切り離し、彼女が自由な薬師として生きられるよう計らいました。
翠苓に「生きろ」と伝えたのは、名前を奪われ続けた姉への最期の贈り物だったのかもしれません。
楼蘭は一族の罪のない子供たちに「よみがえりの薬」を飲ませ、一時的に仮死状態にしました。
周囲には「毒を飲んで死んだ」と思わせることで処刑を免れさせ、彼らを密かに逃がす計画を実行しました。
猫猫と壬氏へ託した最後の願い
楼蘭妃は、自分の死後を見据えて、猫猫と壬氏にそれぞれ重要な役割を託していました。
- 猫猫へ:「よみがえりの薬」で救った子供たちを託しました。彼らが無事に目覚め、新しい人生を歩めるよう、猫猫の薬師としての腕と情にすべてを預けたのです。
- 壬氏へ:「罪のない一族の子供たちや、強制的に従わされていた者たちへの寛大な処置」を切に願いました。「一度死んだものは助けて欲しい」と壬氏にお願いしています。壬氏は、楼蘭が命を賭して伝えたメッセージを受け取ります。
猫猫はこのとき、「自分が連れてこられた理由」や「子翠が最期にやろうとしていること」を悟ったのです。
二つ目の願いとして、楼蘭妃が壬氏の顔にわざと傷をつけたのは、自分も反逆者として罪を背負い討たれる覚悟があったからでしょう。
恨みを持つ母の代わりとなって、先帝にそっくりな顔を持つ壬氏に傷をつける・娘なりの精一杯で一矢報いたともとれます。
その後、その場にかけつけた馬閃(ばせん)によって(馬閃は壬氏につけられた傷と流血をみて)、楼蘭妃は実際に撃たれます。
反乱の舞台となった砦のバルコニーで、楼蘭妃は壬氏と翠苓の目の前で最後の舞を披露するのでした。
楼蘭妃は最期、すべてを焼き尽くす炎を背に、極寒の雪が降る崖下へと身を投げます。
それは一族の罪をすべて背負い、自らの手で終わらせる凄絶な「幕引き」となりました。
彼女は「子昌と神美の道具」として生まれましたが、その最期は誰の駒でもなく、自らの意志で両親の物語を終わらせ、一族の未来を救い出すという、一人の女性としての強固な意志に基づいたものでした。
ここまでが、壮絶な物語の結末です。
楼蘭はまだ生きているのか?
ちなみに。
物語の最後、彼女が生きていることを強く示唆する(というかほぼ確定の)描写が存在します。
反乱の後、港町で玉藻(たまも)と名乗る女性が描かれています。
玉製のセミと銀のかんざしを物々交換しているため、昆虫好きの子翠の特徴とも一致しますね。
彼女は、猫猫からもらった銀のかんざしをもっているので、この玉藻が楼蘭本人で間違いないでしょう。
そしてよく見るとかんざしには銃弾が当たった跡があります。
つまり、猫猫のかんざしのおかげで楼蘭は命を救われた可能性が高いです。生きていて本当によかった〜と思いました(涙)
と、ここまでが、楼蘭妃(子翠)にまつわる事の顛末です。
楼蘭妃(子翠)を巡る複雑な家系図を整理
ややこしくてよく分からなくなった方も多いと思いますので、最後に複雑な家系図を整理しますね。

※二次利用可ですが必ず引用をつけてください
(※壬氏に関する物語は、このあと補足解説します。)
- 先帝:現皇帝や翠苓の母の父親。極度の幼女嗜好(ロリコン)があり、後宮に多くの歪みと悲劇を生んだ元凶。(とにかくコイツが悪いと思う)
- 大宝(たいほう):神美の元侍女で、先帝のお手付きとなった妃。翠苓の祖母にあたる。
- 翠苓の母(大宝の娘):先帝と大宝の間に生まれた娘。医官との不義の子として追放された後、子北州で子昌に娶られ翠苓を産むが、神美の折檻により命を落としたとされる。
- 子昌(ししょう): 子一族の当主であり、楼蘭と翠苓の父親。一族を想う心は強いものの、妻・神美の狂気と執念に振り回され、結果として反乱へと突き進むことになる。
- 神美(シェンメイ): 楼蘭の母親であり、子昌の後妻。かつて後宮にいた際に先帝から顧みられなかった屈辱から、皇族全体に深い憎しみを抱く。翠苓や翠苓の母のことも異常なまでに疎ましく思う。
- 楼蘭(ろうらん): 侍女「子翠」として猫猫と友人関係を築いていた少女の正体。両親の歪んだ期待に応える「完璧な人形」として振る舞いながらも、心中では一族の因縁を自分の代で清算しようとする強い覚悟を持っている。
- 翠苓(すいれい / 異母姉): 子昌が大宝の娘(先帝の娘)との間に設けた子。楼蘭の腹違いの姉にあたる。有能な薬師として一族の暗部で活動していた。妹である楼蘭を心から愛し、彼女の計画を支える相棒でもあった。
- 皇太后(安氏):現皇帝の母。先帝に愛されなかった孤独から、我が子(本来の皇弟)を疎み、阿多妃の子(壬氏)との入れ替えを行った。
- 現皇帝:先帝と皇太后の息子。阿多妃とは幼馴染であり、彼女との間に生まれた実の息子(壬氏)を、血筋のねじれにより「弟」として遇している。(赤子の入れ替えは知っている。だから壬氏を次の皇帝にしたい想いがある。)
- 阿多妃:現皇帝の最初の妃。赤子の入れ替えにより、実の息子である壬氏を「皇弟」として手放すことになった。
- 壬氏(華瑞月):表向きは「現皇帝の弟」として生きており、宦官に偽って後宮にもいるが、その真の正体は現皇帝と阿多妃の間に生まれた第一皇子。
- 本来の皇弟:先帝と皇太后の間に生まれた真の皇弟。赤子の頃に壬氏と入れ替えられ、阿多妃の子として育てられたが、蜂蜜の毒により亡くなった。
(補足)運命を狂わせた「赤子の取り違え」と壬氏の血筋の秘密
この章は補足です。
結局のところ実は、壬氏と翠苓は同じ「先帝の孫」であり、従兄弟(いとこ)ということになります。
壬氏は、いとこに命を狙われていたのですね。
家系図をみて、さらに訳がわからなくなった人もいるかもしれませんので、補足解説しますね。
この物語の根底にはさらなる大きな秘密がありました。
それが、壬氏についての秘密です。
複雑に絡み合った血筋の秘密と、壬氏がなぜ命を狙われることになったのか、その背景を整理します。
なぜ壬氏は「宦官」として身分を偽っているのか
壬氏が美しい素顔を隠し、去勢された役人である「宦官」として後宮に潜り込んでいますよね。
それには、深い理由があります。
壬氏の正体・表向きの本来の立場は、「皇弟(こうてい)」(現皇帝の弟)です。
現帝には、かつて男児がいませんでした(実は秘密があるがそれは後ほど)。
つまり、唯一の成人男性である皇弟は、次期皇帝候補であるわけで、常に政争の的になります。
しかし壬氏は、自らが皇帝の座を狙う意思が全くなく、そうした政争に巻き込まれることもことを心底望んでいませんでした。
この背景としては、壬氏本人の野心に対する無関心ももちろん関係しているとは思いますが、
「現帝」と「皇弟である壬氏」とでは年が15歳ほども離れており、先帝がロリコン嗜好であることも知っていたので「自身が不義の子ではないのか」「もしそう(先帝と皇太后の子ではない)ならば自分は次期皇帝にはふさわしくない」と思っていた節があります。
そこで昔、壬氏が現帝と「賭け碁」を行いそれに勝った報酬として自ら志願して宦官の身分を偽り、後宮入りしました。
後宮という「女の園」を管理・監視する本当の目的は、いわゆる「継承争いからの離脱」を狙っていたからです。
もし皇帝に直系の男子(皇子)がいない場合、次期皇帝の筆頭候補は「皇弟」である自分(壬氏)になってしまいます。
そこで皇子(皇帝の息子)が誕生し、無事に成人に育つことが叶えば、自分の皇位継承権は下がりますよね。
皇子が複数いればさらに安泰ということになります。
だからこそ、彼は猫猫の知恵を借りてまで、赤子の不審死を防いだり、妃たちの健康管理を徹底したりして、「一人でも多くの元気な皇子を育てること」に必死になっているわけです。
なぜ翠苓や子昌に命を狙われたのか
壬氏は、物語初めは翠苓(すいれい)に、物語中盤では「狩り」の際に子昌(ししょう)に命を狙われましたよね。
これには子一族の冷徹な政治戦略と裏では神美の歪んだ怨恨があったことはすでに触れました。
子一族にとっては、現皇帝に万が一のことがあった際に、唯一の継承者である皇弟がもしいなければ、国は深刻な後継者問題に陥ります。
それで壬氏を暗殺し、現皇帝を失脚させれば、子一族が望むような道が開ける可能性も高まります。
翠苓は一族の実行部隊として、得意の薬学を駆使して壬氏の暗殺を企てました。
壬氏は、子一族にとっては敵であると同時に、自分たちを縛り付けてきた恨めしい「皇帝一族の象徴」でもありますからね。
その後子昌も、狩りというイベントは「事故」を装いやすい絶好の機会でした。狩りに乗じて、フェイファで壬氏を暗殺しようと試みます。
皇族を殺害するという一線を超えることは、ある意味「もう後戻りできない」という強い決意と、反乱開始の合図でもあったのかもしれません。
壬氏の血筋の真相・赤子の入れ替え
ここが物語の最大の秘密です。
実は、壬氏の本当の出自は「皇弟」ではありませんでした。(壬氏本人も知らない)
鍵を握るのは、阿多妃(アードゥオひ)です。
阿多妃は、現皇帝がまだ東宮(皇太子)だった頃からの幼馴染であり、現皇帝の最初の妃でした。
阿多妃と現皇帝には、子供が生まれます(世間では、幼くして蜂蜜の毒で死んだとされている)。
さらに、全く同時期に皇太后と先帝の間に子供が生まれています。
出産時、阿多妃は難産でしたが、当時後宮には医官が一人しかいなく、阿多妃よりも皇太后の出産が優先されました。
阿多妃は、今後もこういったこと(先帝と皇太后の息子が優遇されるようなこと)が起こるのを危惧し、秘密裏に赤子を入れ替えるという判断をします。
皇太后もこの常軌を逸した判断を了承しています。
なぜなら、皇太后は極度の幼女嗜好で「自分を愛してくれなかった」先帝を心底憎んでおり、そんな先帝の子を(我が子だとしても)疎ましく思っていたからです。むしろ、孫の方が愛せると思ったのかもしれません。
つまり、壬氏の表向きの立場は「現皇帝の弟」ですが、その本当の正体は「現皇帝の息子(第一皇子)」なのです。
整理します。
- 公的な身分(表向き):
- 皇弟:先帝と皇太后の子。現帝の弟。これが壬氏の表向きの正体
- 現帝と阿多妃の子:現帝と阿多妃の子は、赤子の頃に蜂蜜の毒で死亡したとされる。
- 真実の身分(裏側):
- 皇弟:実は赤子の頃に蜂蜜の毒で死んでいる。先帝と皇太后の実の息子(真の皇弟)
- 現帝と阿多妃の子:実は、これが壬氏の真の正体。現帝と阿多妃の実の息子(第一皇子)
翠苓と壬氏は、同じ血を引く「いとこ」同士
家系図を整理すると、驚くべき事実が浮かび上がります。
- 壬氏の祖父:先帝
- 壬氏の父:現帝
- 翠苓の祖父:先帝
- 翠苓の母:先帝と大宝の間に生まれた娘
【結論:二人の関係】 壬氏の父と、翠苓の母は、どちらも先帝を父に持つ「異母兄妹」です。したがって、その子供である壬氏と翠苓は、先帝の孫・いとこ同士という関係になります。
二人はいわば共に「先帝が生んだ歪み」の犠牲者であり、翠苓は反乱軍の薬師として壬氏の暗殺を試み、壬氏は翠苓に暗殺を狙われつつも最終的には皇族として禁軍を動かすことになるという数奇な運命の持ち主と言えますね。なんという…。
独自考察・楼蘭が背負っていたものとは
物語をここまでみてくると、楼蘭という一人の女性が背負わされていたものの重さに胸が締め付けられます。
生まれながらにして抱える悲惨な境遇。
猫猫を言っていたとおり「逃げる」という選択肢もあったのかもしれません(いやその選択肢は無かったからそうなったのか…)
楼蘭が自分で選んだ道がいかに過酷で、いかに強い意志に満ちていたかが痛いほど伝わってきます。
彼女の人生は、生まれた瞬間から「誰かのための道具」として設計されていました。
父・子昌にとっては政治の駒、母・神美にとっては復讐の装置。
しかし、彼女はただ流されるだけの「完璧な人形」では終わらなかった。そこに、楼蘭という女性の真の凄みと、あまりにも切ない美しさが宿っているように私は感じます。
「化ける」ことでしか守れなかった自分
彼女が毎日顔を変えるほどの厚化粧をしていたのは、単なるスパイ活動のためだけではなかったはずです。
「本当の顔を見せない」ことは、彼女にとって唯一の自己防衛だったのではないでしょうか。
誰からも「楼蘭」という個人の心を見てもらえず、一族の野望や怨念だけを投影される日々。そんな中で、顔を塗り固めることは「本当の自分を誰にも汚させない」という、彼女なりの静かな抵抗だったようにも思えます。
「子翠」という名のシェルター
そんな彼女が、姉・翠苓の元の名前を借りて「子翠」として過ごした時間。猫猫と一緒に泥にまみれて虫を追いかけ、他愛のない会話に花を咲かせたあの日々は、彼女の人生において唯一の嘘のない真実だったのかもしれません。
- 一族の看板を背負わなくていい時間
- 誰の思惑も気にせず、ただ好奇心のままに動ける自由
- 「妃」でも「間者」でもなく、ただの「友人」として扱われる喜び
最後に、猫猫に子供達を託したあの瞬間、彼女は「皇帝の妃」としてではなく、一人の「大切な友人」としてのお願いしていました。最期に猫猫からもらった「銀のかんざし」は、猫猫と子翠との繋がりをこれからも形として残す大切なものでした。
呪われた血筋を断ち切る「幕引き」その覚悟
彼女の最期の役割は、子一族の反乱を失敗させ、父を死に追いやり、自らの手で実の母を殺める、そして一族を完全に終わらせることでした。
彼女は知っていたはずです。母・神美の狂気が続く限り、そして子一族という怨恨が残る限り、自分も、そして慕っている姉の翠苓も、無邪気な子供たちも、永遠に呪縛から逃げられないことを。
彼女が楼蘭妃として美しい舞を踊り、砦から身を投げたのは、絶望したからではなく、すべてを清算して一族が「自由」になるための、彼女なりの大切な儀式だったわけです。
そして裏では「最後のわがまま(願い)」として翠苓や子供たちや罪のない人たちを救い、壬氏と友人の猫猫にその未来を託した。
自分は「悪役の妃」として歴史の表舞台から消える。
その”完璧”な幕引きは、あまりにも鮮烈で高潔であると同時に、胸がぎゅっと締め付けられるような悲劇的な運命でした。
雪の中に消えた、一人の少女として
最期、雪の中に消えていった彼女の胸元には、猫猫からもらった「銀のかんざし」が入っていました。
それは、彼女が「子一族の楼蘭」としてではなく、「猫猫の友人・子翠」としてこの世に存在した唯一の証でもあります。
一族という囚われの檻を焼き尽くし、続いてきた呪縛を雪で洗い流す。
彼女自身も一度死に、「何者でもない一人の女性」に戻れたと信じるのが、せめてもの救いでしょう。
翠苓も、命を吹き返した子供たちも、きっとどこかでこれからも元気に生きていくことでしょう。
その後、彼女が「玉藻」としてどこかで生きているのだとしたら、その瞳には、もう誰かの野望を映す必要のない、ただ穏やかな空と大好きな虫たちが映っていることを願わずにはいられません。
これほどまでに重たい運命を一身に背負い、自己犠牲を持ってして立ち向かい、最後の最期に自分の願い(翠苓や子供達を救いたいという願望)までを通した。
これほどまでに強い覚悟を持てるだろうか。彼女の生き様にはいろいろなことを考えさせられます。
まとめ
子翠と楼蘭妃。
この二つの人格を行き来した彼女の生涯は、まさに『薬屋のひとりごと』という物語の奥深さを象徴するものでした。
- 正体:楼蘭妃は子一族の娘であり、後宮の上級妃の一人。子翠は、侍女に扮してたときに名乗っていた名前。
- 目的:一族の野望の遂行と、彼女自身の願いを成し遂げるため。
- 最期:一族の運命を背負い全ての清算し、崖下の雪の中に消えた悲劇のヒロイン。
彼女がいなくなった後の後宮は、きっと少しだけ静かになります。
しかし猫猫の心にはキャッキャと騒ぐ「虫好きの子翠」という友人の記憶が、いつまでも温かく、そして切なく残ることでしょう。